勉強用

個人的に勉強したことをまとめます

ヘパリンの適正使用

ほとんどの出典:https://www.jsth.org/publications/pdf/tokusyu/19_2.187.2008.pdf

 

〇ヘパリンは,分子量3,000~35,000(平均分子量;12,000)の酸性ムコ多糖類の不均一な混成物
〇アンチトロンビンを介して抗凝固作用を示す。
〇アンチトロンビンは、トロンビン、活性化第Ⅹ因子などのセリンプロテアーゼと 1:1 の複合体を形成しそれらの作用を緩徐に阻害する。
〇ヘパリンの効能・効果として、①血栓塞栓症(静脈血栓症心筋梗塞肺塞栓症、脳塞栓症、四肢動脈血栓塞栓症、手術中・術後の血栓塞栓症など)の治療及び予防、②播種性血管内血液凝固症(DIC;disseminated intravascular coagulation)の治療、③血液透析・人口心肺その他の体外循環装置使用時の血液凝固の防止、④血管カテーテル挿入時の血液凝固の防止、⑤輸血及び血液検査の際の血液凝固の防止が挙げられる。

〇ヘパリンの禁忌・慎重投与
①    出血している患者 : 血小板減少性紫斑病,血管障害による出血傾向,血友病その他の血液凝固異常(DIC を除く),月経期間中,手術時,消化管潰瘍,尿路出血,喀血,流早産・分娩直後等性器出血を伴う妊産褥婦,頭蓋内出血の疑いのある患者など[出血を助長することがあり,ときには致命的になるおそれがある]
②出血する可能性のある患者 : 内臓腫瘍,消化管の憩室炎,大腸炎,亜急性細菌性心内膜炎,重症高血圧症,重症糖尿病の患者など[血管や内臓の障害箇所に出血が起こるおそれがある]
重篤な肝障害のある患者[凝固因子や AT の産生が低下していることがあるので,本剤の作用が変動(増強または減弱)するおそれがある]
重篤な腎障害のある患者[排泄が障害され,薬剤の作用が持続するおそれがある]
⑤中枢神経系の手術または外傷後日の浅い患者[出血を助長することがあり,ときには致命的になることがある]
⑥本剤に対し過敏症の既往歴のある患者
⑦ヘパリン起因性血小板減少症(HIT:heparin-induced thrombocytopenia)の既往歴のある患者[HITが発現しやすいと考えられる]

〇ヘパリンの投与法
静脈内点滴注射法、静脈内間歇注射法、皮下注射法、筋肉内注射法が知られ,病態に応じて選択する。
静脈内点滴注射法には,①当初から維持量(10,000~20,000 単位 / 日)を持続投与する方法②初期に急速飽和量(50 単位/kg)を投与し,その後維持量を持続投与する方法がある。
静脈内間歇注射法では1 回 5000~10000 単位のヘパリンを4~8 時間ごとに投与する。注射開始 3時間後から2~4 時間ごとに活性化部分トロンボプラスチン時間(APTT)を測定し、投与前の 1.5~2.0 倍になるように投与量を調整する。
皮下注射法(皮下注射用の高濃度のヘパリンを使用)では、初回に 15000~20000 単位、続いて維持量として 1 回 10,000~15,000 単位を 1 日 2 回、12 時間間隔で投与する。手術又は心筋梗塞等に続発する静脈血栓症の予防には5,000 単位を 12 時間ごとに注射する。
筋肉内投与法は筋肉内血腫を生じることがあり避けられることが多い。
ヘパリン投与期間は病状が安定するまで比較的長期間用いられることが多かったが、早期から経口抗凝固薬に変更してもその効果に差がないこと、入院期間を短縮するという社会的ならびに経済的な背景を踏まえ投与期間は 7~10 日とし、その投与期間の後半に経口抗凝固薬を併用し以降は経口抗凝固薬単独に移行する指針も提唱されている。
ヘパリンの抗凝固効果が十分に認められず、APTT を 1.5 倍に延長するために 35,000 単位/ 日以上のヘパリンを要する病態は「ヘパリン抵抗性」として知られる。

出血性副作用はヘパリン療法の約 20%(2~30%)に認められる。出血は脳出血・消化管出血・肺出血・硬膜外血腫・後腹膜血腫・腹腔内出血・術後出血・刺入部出血など様々な出血症状が認められる。異常が認められた場合にはヘパリンを減量または中断し適切な処置を行う。急速にヘパリンの効果を抑制する必要がある場合には、プロタミン硫酸塩の静脈内投与を行う。プロタミンは,低分子量の強塩基性蛋白であり,AT・ヘパリン複合体からヘパリンを解離して,プロタミン・ヘパリン複合体を形成し,抗ヘパリン作用を発揮する。
1,000 単位のヘパリンを中和するためには,10~15 mg のプロタミンが必要とされる.
50 mg を投与総量の上限として、APTT の測定により血液凝固能の改善程度を評価しながら血圧降下やショックなどの副作用に注意して慎重に投与する。
プロタミン中和後の APTT の再延長は,「ヘパリンの反跳現象」として知られる。