勉強用

個人的に勉強したことをまとめます

不整脈薬まとめ

@hirotanpiropiro さんの #不整脈薬レビュー が参考になったので、まとめてみました。

基本データ:

Vaughan Williams 分類

クラスIa Naチャネル抑制 活動電位持続時間延長

クラスIb Naチャネル抑制 

クラスIc Naチャネル抑制

クラスII βブロッカー

クラスIII Kチャネルブロッカー

クラスIV Caブロッカー

クレアチニン>2.0で使える薬剤 アトロピン、ATP

肝機能障害(Bil>2.0)で使える薬剤 ソタロール、アトロピン、ATP、ジゴキシン

 

目次:

1.ワソラン(ベラパミル) 2.サンリズム(ピルジカイニド) 3.アンカロン(アミオダロン) 4.ジギタリス 5.メキシチール(メキシレチン) 6.ベプリコール(べプリジル) 7.アデホス(ATP)急速静注 8.リスモダン(ジソピラミド)、シベノール(シベンゾリン) 9.タンボコール(フレカイニド) 10.プロノン(プロパフェノン)

 

1. ワソラン(ベラパミル)

クラスIV群、Caブロッカー

1回40~80mg, 1日3回内服 小児なら1回1~2mg/kgを1日3回 

 

〇心房心室間の伝導を抑制するため心房細動のレート下げたりPSVT停止に使用

〇一部のVTに効く(ベラパミル感受性VT)
×心機能悪い時は注意(特に静注、心機能悪い場合心臓止まる)
×偽性心室頻拍には禁忌
×気軽に使われがちだが静注する際は循環器コールすべき。

・ワソラン静注は、ATPでPSVT止めてもすぐ再発する場合か、特殊なVTの場合。内服はレートコントロールの時に出すことが多い。(β遮断薬を使うことが圧倒的に多いが)

 

2.サンリズム(ピルジカイニド)

クラスIc群、Naチャネル抑制

1回50mg, 1日3回内服 小児1日2mg/kg, 3~4回分服

Ccr<60→1日1回50mg Ccr<30→1日1回25mg Ccr<15→48hごと25mg

✔︎心房細動の停止や発作予防によく使用される
✔︎pill in the pocketが有名
✔︎持続時間が短く使いやすい
✔︎腎機能悪い方は注意
✔︎Brugada型心電図への使用も注意(Brugadaを顕在化させVFを起こす可能性あり)→診断目的で使用することも

心房細動患者が多い昨今、使用頻度が多い薬。私も薬で心房細動止めたい時によく出します。(内服静注ともに)
使用注意点としては腎機能障害、Brugada、あと心房粗動(Ⅰc心房粗動)を起こすことがあります。
あと薬が効くとQRSが幅広くなるのがポイント。効き過ぎてないかQRSに注目するのも大事ですね。

 

3.アンカロン(アミオダロン)

✔︎心房性にも心室性(VT/VF)にも有効
✔︎蘇生時にも活躍
✔︎効くまでに時間かかる
✔︎副作用(甲状腺機能障害、眼異常、間質性肺炎など)→要定期チェック
✔︎低心機能でも使える
✔︎半減期がめちゃ長い→1ヵ月以上
✔︎QT延長に注意→TdP

致死的不整脈(VT/VF)の予防にも有効な数少ない薬。
突然死予防と言えばICDですが、薬剤ではこの薬が最重要。
一般に不整脈薬は器質的心疾患がある場合予後を悪くするリスクがありますが、アミオダロンは心機能低下例でも使用できます。(むしろ他の選択肢がほぼない)
慢性期のQT延長→TdPにご注意を。

また心房性不整脈(心房細動)にも有効ですが、副作用もあるため原則は心筋症や心不全合併症例に使用しています。

突っ込んだ話をするとアミオダロンは静注と経口で薬理作用が少し異なります。(例えば使用急性期は除細動閾値を下げる一方で慢性期には上昇する、静注の方が血圧低下や徐脈が多い..etc)

 

4.ジギタリス製剤

✔︎強心薬として有名
✔︎房室伝導を抑制→心房細動のレートコントロール
✔︎ジギタリス中毒☠️→徐脈、催不整脈作用、消化器症状、精神神経症状etc
✔︎最近はあまり使用されない
✔︎救心はジギタリスと似た薬理作用があるらしい
✔︎花言葉は不誠実

強心薬としてかつて有名だった薬。
不整脈薬分野での主な使用は頻脈性心房細動のレートコントロール
一見強心作用もあって使いやすそうですが個人的にぶっちゃけると、
・レート下がらない(特に交感神経興奮状態の時)
・他の不整脈起こす(VPC、徐脈やブロック、頻脈など)
・中毒怖い

実際にはAFレートコントロールにはβ遮断薬が使えるならβ遮断薬第一、効果不十分だったり低心機能ならジギ少量追加みたいに使うことが多いです。その後必ずオフします。

 

5.メキシチール(メキシレチン)

✔︎心室不整脈に有効
✔︎主にVPC(一部のVT)に使用
✔︎心機能抑制が少なく使いやすい
✔︎副作用→めまい、ふるえ、消化器症状や神経症
✔︎糖尿病性神経症にも適応あり
✔︎特殊な症例でQT短縮作用も

イメージ的にはリドカインの内服版。
基礎疾患のないVPCで自覚症状強い方などにβ遮断薬と並んで処方することがあります。
正直すごく効いたな〜って経験はあまりないですが時に著効します。
副作用は時々経験するのでご確認を。
LQT3やアミオダロンなどのQT延長時にQT短縮に有効だった症例報告あり。

 

ついでにリドカインも。
リドカインは最近は蘇生の場ではアミオダロンに主役の座を譲りましたが、心機能低下作用が弱いため使いやすくVTでたまに使用します。
アミオダロンは効くまでに時間がかかりますがリドカインは早いのもメリット。
ACS含めVTの予防的な投与には推奨されてませんのでご注意を。

 

6.ベプリコール(ベプリジル)

✔︎心房性・心室不整脈にも有効
✔︎個人的に心房細動治療のキードラッグ
✔︎Ca遮断薬だがKやNaチャネルも抑制
✔︎狭心症にも適応→ほとんど使わない
✔︎QT延長に注意!!
✔︎薬剤性間質性肺炎にも注意
✔︎透析患者でも使用可

この薬無しでは心房細動治療は語れないくらい重宝している薬。
特に持続性心房細動の洞調律維持を狙う場合、内服下で電気的除細動やカテーテルアブレーションを併用します。(薬のみで洞調律復帰することもよくあります)
効果不十分の場合アプリンジンやⅠc薬と併用が有効なことも。

循環器科医しか処方しない薬だと思いますが内服していたら常にQT延長に注意を(TdP)。私は1日100mgまで。β遮断薬併用でQT延長を緩和できることがあり併用することが多い。
Brugada症候群VFのICD作動例にも使いますが効果は限定的な印象。
消化器症状や薬剤性間質性肺炎にもご留意を。

左房拡大に対してはベプリジルはよく使います。
心不全の場合には心不全の原因が何かにもよりますが、左心機能が著しく悪い場合にはベプリジルよりもアミオダロンを選択しています。
ただ軽度心機能低下例の持続性心房細動心不全症例に使うことは臨床的にはありますよ!

 

7. アデホス(ATP)急速静注

✔︎急速静注で房室伝導をブロック
✔︎例外を除けば
 PSVT→停止
 心房細動/粗動→停止せず
✔︎効果は長くても10-20秒
✔︎量や打ち方、交感神経亢進では効かないことも
✔︎胸部不快が起こる→使用前に患者さんに伝えること
✔︎喘息は禁忌

ATPは一瞬房室ブロックになるため、使い慣れるまで怖いと思いますが、慣れればPSVTの停止や頻拍の鑑別にとても有用。ATPを打った時の反応が大事です。(停止するか?P波のレートは?)
持続時間も短く大事故につながることも稀ですが、喘息の既往だけ確認を。

ATPを使いこなす者は不整脈を制す!!

一例を挙げます。

←ATP前
V1のP波ははっきり見えQRSと1:1に見えるため洞性頻脈にも見える。

→ATP直後
ATPで房室ブロックになるとQRSに重なったP波が確認、鋸歯状波も確認でき実は2:1の心房粗動。

ATP打つ時は心電図の延長記録を残しましょう。後で確認できると我々がとても助かります!!

 

8.リスモダン(ジソピラミド)、シベノール(シベンゾリン)

リスモダン(ジソピラミド) 1回100mg, 1日3回 

シノベール 1日300mgより開始、効果不十分なら450mg 1日3回(50mg or 100mg) 

いずれも腎排泄 腎機能障害だと×

✔︎主に心房性不整脈に使用
✔︎WPW症候群のKent束伝導抑制
✔︎抗コリン作用あり
・夜間発作型の心房細動に有効
・口渇、排尿障害、便秘など注意
・HR上昇
✔︎稀に低血糖
✔︎閉塞性肥大型心筋症の圧較差軽減

不整脈発作(主に心房細動)に使用される薬。
心房細動発作には日中発作型と夜間発作型があり、夜間発作型は抗コリン作用を持つこれらの薬が有効なことが多い。
→発作の時間帯の問診やホルター心電図が重要。

抗コリン作用はリスモダン>シベノール。シベノールの方を好んで処方されることが多いです。

副伝導路抑制作用があるためWPW症候群に伴う頻拍発作(AVRTやpseudo VT)の予防や、閉塞性肥大型心筋症の圧較差軽減目的に使用されることも多い薬です。
ただし抗コリン作用の副作用のため内服継続が難しい場合もあり。
処方の際には前立腺肥大、緑内障、重症筋無力症など既往の確認もお忘れなく。

 

9.タンボコール(フレカイニド)

✔︎心房性・心室不整脈に有効
✔︎主に心房細動やVPCの抑制
✔︎心筋梗塞後や心筋虚血例では予後を悪化させるため禁忌(CAST試験)
✔︎Ⅰc心房粗動に注意
✔︎カテコラミン誘発性VTにも有効性あり

私自身は心房細動や器質的心疾患のないVPCに処方します。まぁまぁ効く印象。

重要なのは心筋梗塞後のVPC抑制に使用したCAST試験では逆に予後を悪くしたこと。
→現在では心筋梗塞既往や虚血のある方にはIaとIcは原則禁忌です!
使用する場合にはβ遮断薬やリドカイン、アミオダロンを選択しましょう。

 

10.プロノン(プロパフェノン)

✔︎心房性・心室不整脈に有効
✔︎主に心房細動の停止や再発予防に使用
✔︎β遮断作用あり
 →徐脈に注意
 →心機能低下例の心不全増悪に注意
 →喘息既往の確認を
✔︎透析患者でも使用可
✔︎副作用→肝機能障害、消化器症状など

個人的に割とよく出す薬。添付文書通りの450mgから始めるのは少し怖いため私は300mgから出します。

β遮断作用があるので高齢者や心機能悪い方には慎重に。過去に喘息悪化の原因がこの薬だった経験あり。

透析患者でも安心して使えるⅠ群薬はプロパフェノンとアプリンジン。是非覚えましょう。