こっちには、救急外来や病棟で不整脈があったときの対応をまとめます。
分かりやすさ重視で、細かい説明などは省きましたのでご理解お願いします。
1.徐脈性不整脈
第 1 度房室ブロック,洞徐脈や第 2 度房室ブロック(Wenkebach型)など無症候性の徐脈→治療適応はない。
有症候性、第2度房室ブロック(Mobitz II型)、Ⅲ度房室ブロック、洞停止、洞房ブロック、徐脈頻脈症候群(洞結節機能低下+頻脈性不整脈)→(テンポラリー)ペースメーカの植込みが第 1 選択。※1
橋渡し治療としては、アトロピン0.5mgの静脈内投与が最も行われ、次にイソプロテレノール0.01~0.03μg/kg/分の投与を行う。また、テオフィリン200-400mg/日やシロスタゾール200mg/日でも改善しうるが、徐脈性不整脈に対する保険適用なし。
2.期外収縮
2-1.上室期外収縮
100 拍/日程度までは正常と考えてよい。1000拍/日なら、40%で新規心房細動あり。
カフェイン・アルコール摂取の制限がfirst。症候性ならβブロッカー。
2-2.心室期外収縮
自覚症状が軽ければ生活習慣の改善で経過を見る。
器質的心疾患のない症候性心室期外収縮患者に対しては、 QOL 改善を目的としたβ遮断薬や Ca 拮抗薬の投与が行われる。
心室期外収縮頻発による心筋症患者に症状や左室機能改善を目的としたβ遮断薬やアミオダロンの投与は〇。
3.発作性上室頻拍
3-1. 救急対応
血行動態が不安定なら初手DC。
血行動態が不安定でなければ
①迷走神経刺激手技 modified Valsalva
修正バルサルバ法のやり方ですが、通常のバルサルバ手技(45度の半座位で15秒の息こらえを行って解放)を行った直後に仰臥位に寝かせ、45度に下肢を挙上させて15秒保持します。ここまで読んでくださった人は、この手技により何が起こるか想像がつくと思います。バルサルバ手技の後にさらに静脈灌流を増やして血圧を上げようということです。ではこの修正法と古典的バルサルバ法のどちらがより不整脈治療につながったのでしょう。
それぞれ214名の発作性上室性頻拍の患者に手技を行い、1分後の心電図で治療効果を判定したところ、古典法37/214 (17%) vs 修正法93/214 (43%) (オッズ比 3.7, 95%信頼区間:2.3-5.8;P<0.0001)という結果となっています。すごいぞ修正法!!
②ATP(アデホス)10mg(1管:+20mgを2回まで)急速静注→喘息に注意!
③ベラパミル(ワソラン)5mg+生食50mLを10分で※2(無効例では5mgを15-30分ごとに総量20mg)
④ジルチアゼム(ヘルベッサー)15-20mgを2-3分かけて静注(無効例では20-25mgを3分かけて追加)
⑤ジソピラミド50mg(5分かけて)、シベンゾリン70mg5mL(5分かけて)、ピルシカイニド=サンリズム(50mg5mL)、フレカイニド50mg5mL(10分かけて)、プロカインアミド1A200mg、アプリンジン100mg10mL+5%グル100mLを10分かけて(1回まで)静注
⑥⑤までで無理ならDC
3-2. その後の管理
根治してほしいならカテーテルアブレーション。
アブレーションやらないなら心機能評価。
心機能が軽度低下程度で顕性WPW症候群-ならβブロッカーorワソランorヘルベッサー、それが無理ならアミサリン250mg3T3x、リスモダン150mg2T2x、サンリズム50mg3T3x、タンボコール100mg2T2x、プロノン150mg3T3x。
4.心房細動
急性期に早急に心拍数調節療法を行う場合,おもに静注薬が用いられる.使用されるのはβ遮断薬,ジギタリス製剤,アミオダロンである.
心不全なく低血圧なし
→①ヘルベッサー(ジルチアゼム) (50mg/V)1V+生食10mL 4mLを2分でゆっくり入れる
→②ワソラン(ベラパミル)(5mg/2mL/A)+生理食塩水8mL (濃度:1mg/2mL)を4mL静注
(注:②はWPWによる心房細動の場合だと副伝導期を短縮させて脈拍が逆に早くなるのでNG)
原因不明な初発の心房細動の脈拍コントロールにはジルチアゼムを投与した方が無難。
また、β遮断薬(ランジオロール、オノアクト)はよく使われる。
50mgを200mLの生食に混ぜて、0.125mg/kg/minで1分間に25mL入れて、そのあと8mL/分ペースで入れる。
JL-KNIGHT 501)によって,心拍数抑制効果および洞調律回復がジルチアゼムよりも優れており,また低心機能(心不全合併)の頻脈性心房細動例を対象にして行われた J-LAND 502)によって,心拍数抑制効果がランジオロールのほうがジゴキシンより優れており,副作用の発現で差がなかったことが示されたことによる.
ジルチアゼム Caブロッカー 10mg/V 1Vを5mL以上の生食に混ぜて3分間かけて落とす
ジゴシン(ジギタリス製剤) 0.25mg 1mL を2-4時間ごと静注
○慢性心不全の治療に最も有用
慢性期の第1 選択薬はβ遮断薬である.β遮断薬とジギタリス製剤の予後改善効果を検証した臨床試験では,β遮断薬は心機能の程度に関わらず患者の予後を改善させたが,ジギタリス製剤ではその効果は認められなかった
5.心房粗動
緊急的に R 波同期 50-100J の電気的除細動(心血行動態が不安定あるいは薬物治療抵抗性の場合
β遮断薬あるいは Ca 拮抗薬静注投与(心血行動態が安定している心房頻拍の停止ある
いは心拍数調節療法
・オノアクト 50mgを200mLの生食に混ぜて、0.125mg/kg/minで1分間に25mL入れて、そのあと8mL/分ペースで入れる。
・ベラパミル(ワソラン)5mg+生食50mLを10分で※2(無効例では5mgを15-30分ごとに総量20mg)
・ジルチアゼム Caブロッカー 10mg/V 1Vを5mL以上の生食に混ぜて3分間かけて落とす
ATP の急速静注投与(心房頻拍の停止あるいは上室性頻拍の鑑別に使用
除細動したら...
抗凝固療法
洞調律復帰を目的とした心房粗動における電気的除細動前後の観察研究によれば,血栓塞栓症の発症率が 1.5 ~2.2% に認められ 669, 670),特に 48 時間以上持続した心房粗
動例でリスクが高くなる 671).また,除細動後の一過性心房収縮欠如(心房筋スタニング)により,心房血流のうっ滞を生じ血栓塞栓症のリスクが高まることから,除細動後にも抗凝固療法の継続が必要とされる
β遮断薬あるいは Ca 拮抗薬経口投与(心血行動態が安定した心房粗動の心拍数調節療
法 680)
) I B A I
血栓塞栓症の予防を目的とした心房粗動における抗凝固療法 77, 692–697)
6.心室頻拍
特発性 VT の発生には生活習慣が関連することも多く,カフェイン,喫煙,飲酒の制限など,誘因の除去を考える 726)
.特発性 VT はカテーテルアブレーションの良好な急性期成功率と長期成績が示されており,まずアブレーションの適応を検討する 3, 73, 726).アブレーションが無効もしくは,施行できない場合には,薬剤を試みる.
7.多形性心室頻拍・torsade de pointes
先天性QT延長症候群:TdP の停止と急性期の再発予防には硫酸マグネシウムの静注(30 ~ 40 mg/kg,すなわち体重 60 kg の成人で硫酸マグネシウム 2 g(1A)を 5 ~ 10 分間で静注し,さらに効果があれば成人の場合 3 ~ 20 mg/分 782)(小児の場合:0.05 ~ 0.3 mg/kg/分)の持続点滴が有効である.
β遮断薬(プロプラノロール,ランジオロール 783))の静注も有効であるが,患者によっては抗不整脈薬(リドカインおよびメキシレチン)あるいは Ca 拮抗薬(ベラパミル)が TdP の抑制に有効な場合もある
二次性 QT 延長症候群:)硫酸マグネシウムを静注する.30 ~ 40 mg/kg を 5 ~10 分間で静注し,さらに効果があれば成人では 3 ~20 mg/ 分,小児では 1 ~ 5 mg/ 分(0.05 ~ 0.3 mg/kg/ 分)の持続点滴を行う.硫酸マグネシウムは TdPの予防効果が高い 782, 802)が,血中濃度の上昇による副作用が出現したときには,減量あるいは中止を考慮する.腎機能障害を有する患者や高齢患者では高マグネシウム血症を起こしやすいので,患者の症状を注意深く観察するだけでなく,血清マグネシウム値をモニタリングし投与量を調整する.
(2)イソプロテレノールを 0.5 ~ 5 µg/ 分(小児では 0.1 ~1µg/kg/ 分)で静注する.持続静注で心拍数 100 拍 /分を目標に投与量を調整する.その位置づけはあくまでペーシング治療までのブリッジであり803),先天的な背景が疑われる場合には QT 延長をむしろ増悪させる可能性があるため,注意が必要である
8.特殊疾患に伴う心室細動・心室頻拍
Brugada:急性期治療
心室細動ストーム時など頻回に心室細動が出現する際には,Ca 2+ 電流を増加させ,また心拍数増加に伴い Ito 電流を抑制するβ刺激薬のイソプロテレノールが有効である
(保険適用外).わが国からの報告では,イソプロテレノール 1 ~ 2μg を静脈内投与し,続けて 0.15μg/分を持続投与する方法,あるいは 0.003 ~ 0.006μg/kg/分持続投与する方法が有効とされる
慢性期治療
24 時間以内に 3 回以上の心室細動発作を認める心室細動ストームの既往を有する場合,または一定の頻度で心室細動の再発を認める場合には,心室細動による ICD の適切作動を回避する目的で慢性期に経口で薬物治療が行われる場合がある.
9.心室細動・無脈性心室頻拍・心停止
10.小児の不整脈
narrow QRS頻拍:narrow QRS 頻拍はおおむね発作性上室頻拍であり,房室回帰頻拍,房室結節リエントリー頻拍,心房頻拍(マイクロリエ
ントリーを機序とするものを含む),心房内リエントリー頻拍などがあり,小児ではこの順で頻度が多い.
血行動態が不良で,上室頻拍かどうかの診断が困難な頻拍では,必要に応じて心肺蘇生を行いながら QRS 同期下カルディオバージョン(0.5 ~ 2.0 J/kg),もしくは電気的除細動を行う.
血行動態が安定していれば,迷走神経手技(息こらえ,アイスバッグ法,顔面浸水,頸動脈洞マッサージなど)を行い,効果がない場合に薬物治療を行う.
ほとんどの上室頻拍が房室結節を頻拍回路に含んでいるため,房室結節伝導抑制作用のあるアデノシン三リン酸(ATP)を急速静注する
再発する場合には Ca 拮抗薬(ベラパミル)をゆっくり静注 898–900),またはジゴキ
シンを静注する.Ca 拮抗薬は乳児期以下では血圧低下など重篤な循環不全をきたす可能性があるため,禁忌である89
房室回帰頻拍では副伝導路の不応期延長や伝導抑制をもたらす Na+チャネル遮断薬である IC 群薬(フレカイニド),IA 群薬(プロカインアミド,ジソピラミド)をゆっくり静注する.
wide QRS:wide QRS 頻拍の鑑別診断は,単形性 / 多形性心室頻拍,逆方向性房室回帰頻拍,脚ブロックを合併した上室頻拍,順行性副伝導路を介した心房細動に伴う心室頻回応答などがあげられる.
血行動態が不安定な場合
カルディオバージョンもしくは電気的除細動は 1 ~ 2 J/kgから開始し,不成功であれば 4 J/kg まで行う.
リドカイン,ニフェカラントあるいはアミオダロンの静脈注射が使用される.
11.妊娠中の不整脈
妊娠中の不整脈に対する治療の多くは非妊娠時の不整脈治療に準ずるが,胎児への影響を考慮した使用薬剤の選択が必要である
β遮断薬→子宮内胎児発育遅延などの児への副作用に配慮しながら投与が可能(有益性投与)である 974)
アミオダロン→児の甲状腺に対する影響から,妊娠中はできるだけ避けることが望ましい
参考文献
2020 年改訂版不整脈薬物治療ガイドライン
https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2020/01/JCS2020_Ono.pdf
循環器医のための心肺蘇生・心血管救急に関するガイドライン
https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2020/02/JCS2010_kasanuki_d.pdf
※1 ICUや循環器病棟にて管理されるテンポラリーのモードはVVIモードであることがほとんど。
ペーシングレート:60
アウトプット:VVI作動中なら0。出力1mA以下という小さな刺激出力でも心室を捕捉できた場合、余裕を持たせて5mA程度で管理
Vセンシティビティー:2mV程度で管理
※2 ベラパミルは陰性変力作用、血管拡張作用あり、低左心機能、心不全状態、血圧が低い場合は使わない。